配属希望の皆さんへ
はじめに
本研究室が「機械システム制御分野」として活動を始めたのは,1998年の情報学研究科発足時まで遡ります. そのときから,情報学における「システム制御理論とその応用」の研究室として運営されてきましたが, 2019年3月に前任の杉江俊治教授がご定年を迎えたことにより,しばらくの間,活動を休止していました.その後, 2022年8月に,本研究室の元教員である東 俊一が名古屋大学から着任し再スタートを切りました.この新しい研究室を情熱を持った学生の皆さんと作り上げていきたいと考えています.4年生は工学部物理工学科機械システム学コースから,大学院生は情報学研究科情報学専攻システム科学コース(2023年度からの新組織)から受け入れています. 本学出身者だけでなく,他大学や高専(専攻科)からの志望も歓迎します.特に, 本研究室では,伝統的に高専出身者の活躍も目覚ましく, 大学の教員となり活躍している卒業生も多くいます.
研究内容
こちらのページをご覧ください.以下は,応用研究に関して,一般向けにプレスリリースしたものです.こちらも参考にして下さい.
- 電力パケット型エネルギーインターネットの新制御技術を開発 〜必要なときに必要なだけ供給可能、実用化の加速に期待〜, 7月19日 (2022)
- AIも木から落ちる! 不確実な予測情報でも精密にシステム制御できる新技術, 3月31日 (2021)
- 新しい分散型多数決アルゴリズムを開発〜センサネットワークの知能化に貢献〜,11月19日 (2020)
- 電力使用の削減未達量を検出する技術を世界で初めて開発〜スパース再構成を利用し,少ないデータで高速かつ正確に〜,6月14日 (2019)
- 電力使用量を調整する経済的価値を明らかに〜発電コストの時間変動に着目した解析・制御技術を開発〜,6月4日(2019)
- 「合流が苦手」なんて言わせない! 〜自動運転車両の円滑な合流を実現するV2I型ブロードキャスト制御技術を開発,11月22日 (2018)
- 超スマート社会で個人情報を守る制御技術を開発〜蓄電池の充電率など秘密のままフィードバック制御〜,11月12日 (2018)
- 電力のリアルタイムプライシングの安定性を保証する設計条件を解明,11月22日 (2017)
研究スタイル
「Nothing more practical than a good theory.」という言葉をご存知ですか? これは,ボルツマン定数で有名なボルツマン(や他の有名な研究者)によるものです.本研究室でも,「今は使えるが,すぐに使えなくなる」ような研究ではなく,この言葉のように,100年後,1000年後も価値を失わない普遍的な理論(=教科書に残る)を構築することを最重要視しています.したがって, 本研究室の活動の基本は,「じっくり教科書や論文と向き合って知識をインプットすること,そして,研究成果を文章としてアウトプットする」ことになります.
研究指導
自分の研究テーマを自分で進めることが基本になりますが,そのために以下の研究指導を行います.
- セミナー (週1回)
制御工学を学ぶ上で基礎となる数学的書籍を輪読(書籍の各部分に担当者を割り当て,担当者が講義)します.特に,「一字一句のレベルで書かれていることをすべて疑う」という立場で輪読します.これを通して,数学の基礎知識(集合,写像,命題論理,述語論理)の習得,他人への説明能力と論文の作成能力の獲得を目指します.また,多くの優れた研究が「常識を疑う」ことから始まっていますが,その練習としての側面も持っています. セミナーで習得することが本研究室で研究活動を行う上での基盤となります. - 個別研究会: 研究の実施 (週1回)
学生の研究テーマの1週間分の進捗状況について指導教員の前で報告し,研究指導を受けます. - 全体研究会: 研究のアウトプットとフィードバック (週1回開催,発表は月1回程度)
研究グループのメンバー全員の前で,卒業研究の進行状況について報告します.研究発表の方法を学ぶとともに,質疑応答を通して,研究のレベルアップを目指します. - 学会発表,論文投稿,特許出願:研究成果の発信(随時)
上記指導を通じて優れた研究成果を生み出し,積極的に社会に発信します.
学生の活躍
多くの指導学生が学術賞を受賞しています.以下は,東教授が名古屋大学で担当していた研究室における最近(3年間)の受賞歴です. 本研究室は学生の皆さんの研究を全力で応援し,広く活躍できる環境を作ります.
- 武隈俊太郎:SICE中部支部シンポジウム&若手研究発表会2022 優秀発表賞 (2022)
- 許芳源:電子情報通信学会高信頼制御通信研究会 オーラルセッション研究奨励賞 (2022)
- 松高亜樹:システム制御情報学会 SCI学生発表賞 (2022)
- 坂野幾海:高信頼制御通信研究会 オーラルセッション研究奨励賞 (2022)
- 坂野幾海:2022年度システム制御情報学会学会賞奨励賞 (2022)
- 坂野幾海:2022年IEEE名古屋支部 国際会議研究発表賞 (2022)
- 坂野幾海:2021年度計測自動制御学会 学術奨励賞(研究奨励賞)(2022)
- 許芳源:電子情報通信学会 高信頼制御通信研究会 オーラルセッション研究奨励賞 (2021)
- 杉山大輝:SICE中部支部シンポジウム&若手研究発表会2021 優秀発表賞 (2021)
- 高倉大:第5回分子ロボティクス年次大会 若手研究奨励賞 (2021)
- 杉山大輝:第64回自動制御連合講演会 優秀発表賞 (2021)
- 多賀駿介:第63回自動制御連合講演会 優秀発表賞 (2020)
よくある質問
- 数学は得意でありませんが大丈夫ですか?
得意でなくても嫌いでなければ大丈夫です.理由は上述のセミナーで数学の基礎を学び直すからです. 数学が得意な学生でも,本セミナーの「すべて疑いながら読む」を最初から実践するのは 難しいようです.つまり,得意でも不得意でも横一線で始まると考えて問題ありません. - 実験はしますか?
移動ロボットを中心に実験装置を構築して動かしています. 実験を行うことで理論研究では見えないことが見えてくることもあり,この点で実験を重視しています. - 他の物理工学科の研究室と同様に,研究室は桂キャンパスにあるのでしょうか?
吉田キャンパスにあります.本研究室は,物理工学科機械システム学コースの教育を担当していますが, 大学院の所属は吉田キャンパスに設置されている情報学研究科であるためです. - 大学院は工学研究科ではないのでしょうか?
本研究室は「情報学研究科」の所属です.大学院でも本研究室への所属を希望する場合は, 「情報学研究科情報学専攻システム科学コース」を受験して下さい. - 機械系(物理工学科)から情報学研究科に進むメリットはなんですか?
「機械工学を学んできたのに情報学研究科というのは不安」と思うかもしれませんが,これからの時代はそれが学生の皆さんの大きな武器になります. 伝統的な機械工学では「四力」と「制御」という5つの柱で構成されていましたが,ロボットやスマート〇〇と呼ばれるものの本質は 機械と情報を有機的に結ぶことにあります.たとえば,自動車産業は,かつて,四力・制御の独壇場でしたが, 自動運転,電気自動車,コネクテッド,シェアリングといった最近のトレンドにおいては, 情報の存在感が急激に増しており,四力・制御の存在感は以前より確実に 小さくなっています. つまり,これからの機械工学では,従来の5つの柱に加えて,6つ目の柱として「情報」が不可欠です. 機械系(物理工学科)から情報学研究科に進学することの意義はそこにあります. - 博士課程は行った方が良いのでしょうか?
博士課程は,専門性を高める場所と思われがちですが,それだけではなく「未知の領域を切り拓き,それに対応する能力」(フロンティアスピリッツ)を養う場です. この点は修士課程までとは大きく異なります.将来,「大学や研究所で研究者になりたい」,「産業界で国際的に活躍したい」 ということであれば博士号は必須です.また,最近は,博士課程修了者を入社時から高く処遇する日本企業も現れ,このような動きは 今後加速すると推測されます. 以上のような状況,ご自身の将来,そして,未来は何が起こるかわからない,ということを総合的に考えて判断するのが良いと思います. なお,博士課程への進学を希望する場合には,研究と将来の進路選択を安心して行えるよう研究室として強力な支援を行います. また,最近は大学からの経済的支援も充実しており,以前のように,自費で進学するケースはかなり少なくなっています. - アルバイトはしても良いですか?
個別の事情があると思いますので各自で判断したら良いと思いますが, 研究室からのアドバイスは以下の通りです.学生にとって,大学・大学院時代は将来が決まる最も重要な時期です. また,研究を通して学べることは思っている以上に大きいものです. 研究に時間を使えるのは今しかなく,研究をおろそかにすると後々ボディーブローのように効いてきます. もちろん「研究とアルバイトを両立」すればいいわけですが,研究成果の量と質は投入した時間に比例しますので 現実には困難です. 本業を加速させるための気分転換の意味合いで短時間のアルバイトをするのは悪くないかもしれませんが, それ以外の場合は 「経済的に本当に必要か?」,「そのアルバイトの方が自分を成長させるのか?」, 「時間や機会を失うことに見合った報酬なのか?」, 「将来に悪い影響を及ぼさないのか?」を慎重に考えた上でご自身にとって最適な結論を出して下さい. - コアタイムはありますか?
ありません.研究をしっかり進める,研究会とセミナーに参加する,研究成果を発表する,そして,それらの活動を楽しむ(これが一番大事), 本研究室で大事なのはこれだけです.